アクタさん投稿小説『碧翼の天使』其の1

【VGエピソード零〜ロリッ娘フェイスのヒットマン】

 あるファミレスの昼下がり〜出会ってしまった強者たちの邂逅。

 ファミレス【ハンナミラーズ】のウェイトレス中(バイト)の武内優香の目の前に、
 やや豪快にテーブルの物品を咀嚼する兵(つわもの)がいた。

 あからさまに商売カタキのファミレス制服を着た少女。

 現在、優香が勤める【ハンナミラーズ】は未曾有の危機に直面している。
 優香以外のウェイトレスたちはその場違いなオンナノコの一挙手一投足をぴりぴりとした緊張感で監視していた。

 

 今大会『ヴァリアブル・ジオ』。
 前回・前々回優勝者、レイミ謝華を破り、【ハンナミラーズ】を有名にした武内優香。

 それに対して脅威を感じた周辺ファミレス店は
 次回ヴァリアブル・ジオにむけて、密かに、優香ちゃん包囲網を狭めていた。

 今年になってからお店の近くに次々とオープンしたファミレスや飲食店の乱立。
 優香のシフト中、ランチタイムの忙しさが時折、
 ランチタイム外の時間の様にガランと閑古鳥が鳴くようなお客の居ない状態になることが多々あった。

 ライバル店のあからさまなイベント。
 無料ドリンクサービスから始まり安い料金値下げ、
 ハンナミラーズのウリを逆手にとってのロリッ娘ウェイトレスのサービス等。

 店先でのビラ配りからはじまり、常連の引き抜き工作〜
 気弱な店長は対策を講じようにも、地域が『イジメ』の様に結託してハンナミラーズを
 のけ者にしているような気風。それに優香はむすっとしていた。

 陰湿なライバル店の裏工作。こちらが言ってくるのを待っている様子。
 クレームが店につくのを恐れ気弱な店長は優香に再三、文句を言いに行くなと懇願。

 さすがの優香も店長の身の上話や家庭の事まで言われては、持ち前の正義も萎れてしまう。
 その挑発が自分ではなく、所属店に向けられているのが歯がゆくてならなかったが・・・・・・・・・・・。

 

 お客もまばらなランチタイムにぱくぱくと美味しそうにランチを食べる
 ライバル店【リュックボーイ】のウェイトレス制服に身を包んだ美少女。

 (・・・・背格好は、真奈美ちゃんと同じぐらい・・・・かな? ショートに耳の処を赤いリボンでツインテール風にしている。
 何か、ボーイスカウト見たいな感じの制服なんだ)

 チェリーパイの皿をテーブルに乗せると優香に会釈する娘。
 つられて優香も笑顔になってしまう。

 姑息な手段を使って店を追い落とそうとするお店のウェイトレス。
 でも、この娘がそれをやっている訳じゃない。

 彼女もバイトなのだろう。笑顔でチーズパイを美味しそうに食べる姿は微笑ましくある。

 満天の笑みで食べ終わって、ふっと一息いれて、
 はっとしてリュックから財布を取り出して、真剣な面持ちで中身を確認。
 はぁ〜とため息して、テーブルに備え付けてあるブザーを押す。

 「注文でしょうか?」

 「いいえ、武内・・・優香さんはいらっしゃいますでしょうか?」

 「ボクに何か?」

 「えっーと、初めまして。私、桂。久琉・桂くりゅう けいってゆいます。
 あ、あの、アナタが優香さん?ですか・・・・・・あの、単刀直入にいっていいですか?」

 たどたどしいロリッ娘口調で少女は優香に言う。

 「あ、アナタを、病院?送りにするように・・言われました。」

 店内全てに聞こえるようなたどたどしい口調。

 「それは・・・どういう?」

 すぐさま身構える優香。厨房や周りを見回し、
 特に顔を出したり引っ込めたりしている店長の泣き顔に
 相手の出方次第で場所を移さなくてはならないと表情を険しくする。

 「あの・・・・優香さん? 手段は、問わないといわれて、いますけど、此処で闘うつもりないです。
  携帯番号教えますから、バイト終わったら・・・連絡してくれませんか?」

 緊張する優香に惚けた笑いを返して桂はリュックを手探りしつつ意中の物を探す。

 「ちっ、ちょっと・・・・・」

 「拒否権は優香さんにはないです。迷惑かからないのと、
  ここで闘うのとどちらがいいか優香さんならわかりますよね?」

 ・・・・・・・・そぅ笑顔で言われたら拒否できるものではない。
 相手は此処で実力行使に出てもいいと脅しをかけている。

 騒ぎになる前にこの娘を取り押さえる事が出来るかも知れないが、
 この子の真後ろのオタク風の男性二人組みの鞄から聞こえる微かなモーター音と煌きが、
 この騒動をスキャンダルにしようとするライバル店の作戦だということが看破出来た。

 それを教えたのはこの子。給仕にきた優香にそっと教えてくれた。

 「ウェイトレスさん。あの人たち、怪しくないですか?」

 油断なく、気付かれないように男たちを一瞥した優香、
 現行犯逮捕してやろうと他のウェイトレスたちに連絡した・・・・・それすらもこの子の罠だとしたら・・・・・。

 「わかった。・・・・・三時にバイト終わるから。」

 「わかりました。じゃ、美味しかったですよ?ハンナミラーズのパイは」

 カウンターで精算する桂。渡された紙幣の上には携帯番号が書かれた紙片。

 「・・・・・・ありがとうございました。」

 複雑な思いで桂の後姿を見送る優香。

 

 バイトが終わり、ハンナミラーズのウェイトレス一同に心配されながら電話番号を入力。
 待ち合わせての帰り道。

 私服のGジャン姿の優香と、黒い厚手のジャンパーを制服の上に羽織った桂。

 取り留めの無い屈託した笑顔で自分の事を話す桂に
 優香はじっと桂の様子を見つめたまま、返答もあまり要領を得ず、相手を伺う。

 「・・・・へぇ、優香さんは都立T学園なンですか〜羨ましいなぁ〜」

 「・・・・・・・キミはドコの高校なの?」

 「・・・・・・やっぱり、そぅ、見られちゃいますよね?」

 桂は優香の質問に嘆息。落ち込んだように俯き加減。

 「・・・・桂・・ちゃん?」

 「ねぇ、優香さん。私・・・・・幾つに見えます?」

 ・・・・最初に思ったのは中学生ではないだろう。
 幼さの残る容姿に流石にそれはと1ランク上げて想像したのに・・・・やっぱり、中学生だったのだろうか?

 「あっ、・・・・えっと、十五歳ぐらい・・・・かな?」

 そのセリフに桂は優香を一瞥して、

 「私、これでも二十歳なンですけど・・・・・・・」

 桂のセリフが一瞬にして優香を気まずい空間へと引きずり込んだ。

 「まぁ、若く 見られるのは慣れているからいいンですけど!」

 恐々としてしまう優香に桂はやや威圧的に喋る。優香にとっては目上。
 それを『ちゃん』呼ばわりした自分が居たたまれない。

 「さて・・・そろそろ本題に入りたいンですけど」

 笑い顔に涙を溜めて優香に果たし状を提示する桂に対して・・・・・・・
 優香は申し訳なさそうにその条件を飲んだ。それは、

 「明日、深夜、この先の城跡にこられたし。優香さんの闘いやすい格好で」

 「わかった・・・・でも、闘う理由は?」

 「年下だと思われたことでは理由になりませんか?」

 「・・・・・すみませんでした。」

 「まぁ、それだけが目的というわけではありませんけど
  それは勝ってから口を割らせてください。・・・・・・勝てるのであれば・・・ね?」

 ・・・・・・・その挑発を静に聞く優香。

 身長は自分よりも低い桂。優香の身長は163cmに対して、桂の身長は145cm前後。
 楠真奈美の様な変則的なファイターという感じはなく、
 どちらかと言うと小柄を生かしてトリッキーな戦闘を仕掛けてくるタイプに思える。

 桂と別れた優香は桂の力量を推し量る。
 仮想敵としてイメージするのは楠真奈美。優香は桂をいかに攻略するかイメージする。

 しかし、どうしても不確定要素・・・・桂の様子にそれだけではない様な感じがしていた。



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