アクタさん投稿小説『碧翼の天使』其の6


 「あら、裏切り者のライゼリカだと思ったのに・・・違うのね?」
 
 煙の中でゆっくりと歩いてくる女。
 金色の装甲服。長い金髪のツインテールの機甲少女。
 
 「だとすると・・・『ナツ』・・・エリスティアか?銀翼の天使」
 
 優香の前に立つ機甲少女。
 右手を突き出し・・・・・無表情に告げる。
 
 「貴女は誰なのかしら?・・・名前と所属軍を提示しなさい。」
 
 「ボクは・・・・ボクは武内優香。キミは誰?」
 
 「VGの優勝者の・・・・そぅ、よくわかったわ。
  ライゼリカの差し金・・・そうでしょう?」

 
 「ライゼリカ・・・・誰のことを言っているの?」
 
 「ライゼリカ・・・・あなたが『桂』と呼んでいる機甲少女の事よ。
  人間であった頃の名前。
 
  私は、ローゼット。人間であった頃からそぅ呼ばれていたわ」

 
 ローゼットは右手を優香に突き出す。
 そこから溢れ出す光は火炎。
 
 真っ赤に燃える紅き色。
 すぅっと目を細めるローゼットに優香は危険を感じる。
 
 「ごきげんよう。」
 
 溢れ出す紅い洪水によって屋敷は燃えていく。
 その情景に愉快と感じローゼットは笑う。
 優雅に・・・・そして耽美な嘲笑。
 
 「キミは・・・・なんて事を?」
 
 「あら。仕留めたと想いましたのに・・・生きているなんて・・・ひどい人」
 
 崩れ落ちていく家から路地に転がり込む優香を追って
 優雅に歩く黄金の貴婦人。
 
 「貴女のこと・・・知っていましてよ?
  元々わたくしたちはあなた方、VG選手と戦うために製造されましたの。
  ミス武内。一局、お相手してくださいます?」

 
 慇懃無礼に御辞宜をするローゼットに優香は間合いを詰める。
 スライディングから足払い。
 それをローゼットがバックステップでかわすと中段打ち。
 
 ローゼットは右手で軌道を変える。ローゼットの肘打ち。
 それを避けた優香は左手に溜めた気をローゼットの脇腹にぶつける。
 
 小さな悲鳴。破損する鎧。
 紅潮するローゼット。火照った顔。
 
 「許しませんわよ。
  下賤な下働きの下女風情が・・・・わたくしの肌を触るなど」

 
 繰出される金色のハイキック。
 それをかわして反撃に転じようとする優香。
 
 「地を這いずりなさい!」
 
 ローゼットが背中のバーニアを発動。
 空中から優香にむかってあの焔の奔流。
 莫大な火炎の濁流に優香は韋駄天足で回避。
 
 着地したローゼット。
 それを見越して再度、迫る優香の韋駄天足。
 
 「甘いですわ」
 
 振り向きざまに兵装を展開する。バーニアが変形してスライド。
 そこから現れるのは十八のガトリング砲。一斉にフルオート。
 
 「くっ」
 
 舌打ちとともに韋駄天足から蒼龍撃に変えてジャンプ。
 炎の弾丸を回避する。
 
 しかし、優香の身体は空中。それにローゼットは笑う。
 
 「愚かですわ。優香さん。
  その愚かさ・・・死んで直しなさい」

 
 優香に向かって両腕を突き出すローゼット。
 腕のバーナー発射口が変形し大口径の砲門になる。

 続いて背中のバーニアは回転しながらガトリングを発射。
 優香を蜂の巣にしようと唸りを上げて迫る。
 
 「食らいなさい。ハルバートウェイド!」
 
 両腕からせり出す砲門が火を噴く。それは活火山から噴出した溶岩弾。
 溶解する金属をそのまま弾として打ち出すローゼットの必殺技。
 
 優香の身体が光り輝く。
 その炎の絶望を睨みながら叫ぶ。勝利を信じて力強く。
 
 『究極・・・気吼弾!』
 
 交差した優香の両腕が強烈な光を放ち、
 ローゼットにむかって繰出された拳が莫大なエネルギー波となって疾走する。
 
 両者の攻撃。霧散する炎。
 むかっていく光の彗星。
 
 市街地の一角。
 城塞からのミサイル発射口をビームライフルで沈黙させた桂はその爆発を見た。
 
 核爆発のような・・・閃光と衝撃波。
 濛々と煙を挙げるこの攻撃が優香の攻撃だと・・・・
 
 振動する大気。
 拡散された気の残り香から察知し、桂は周りを見回す。
 
 雲霞の如くいた機動兵器たちは電子回路をショートさせ墜落していく。
 
 その衝撃波によって桂を取り巻いていた機甲少女の残存勢力は・・・
 桂に対して武器を捨て・・・投降した。戦力差を見せ付けられての降伏。
 
 たった一度の攻撃ですべてを沈黙させてしまった優香。
 顔を赤らめながら失神する機甲少女。
 
 自分が打ち落とした少女たちを介抱しながら
 桂は今だその、爆炎を上げている市街地を見ていた。
 


 市街地のほぼ半分が炎によって蹂躙されていた。
 
 半壊した路地。
 
 ボロボロになったツインテールの機甲少女だったものがうつ伏せに倒れ伏している。
 ばらばらに砕け散った鎧。豊満な乳房、裸体を晒すその少女は時折、
 ひくひくと痙攣し、湿り気を帯びた水溜りを股間に作っていた。
 
 ローゼットは失禁しながら絶頂した。
 恐怖に震えながら快楽によって・・・・
 壊れた人形は、笑っていた。びくびくと痙攣しながら・・・・・・
 
 優香は振り返る。
 
 そこに火の手は上がっていない。
 しかし、至近距離から打たれた気の奔流によって
 市街地は壊滅してしまった。それに気まずい。
 
 ローゼットの卑劣さ、そして、はじめてみるSS。
 機甲少女の攻撃に優香は最大の迎撃をとってしまった。
 
 ローゼットの安否を確認し、
 桂の注意と・・・ローゼットの姿に恐怖した優香はここまで走ってきてしまった。
 この大聖堂に。謝華ミランダがいる目的の場所へ。
 
 「・・・・桂。聞こえる?」
 
 戦闘中にもかかわらず、
 電子マップに園内の地図を転送し、ナビケーションしてくれた桂。
 
 大聖堂まで続く道までたどり着いた時、
 攻撃が激しくなって切った通信回線を再び開く。
 磁気嵐の耳ざわりな雑音・・・通信回線が開かれる。
 
 お互いの無事を確認する二人。
 
 すでに『ライトクーゼリカ』は降伏し『ローゼリカ』機甲少女たちに身柄を拘束されている事。
 一部、砲台が未だ健在で今からそれを停止させにいく事を桂は優香に伝える。
 
 「ローゼットの事ね?
  心配しなくても大丈夫・・・・彼女は私に任せて、優香はミランダを。
  こっちの攻撃が済み次第、そっちに合流するから・・・・・」

 
 「うん。わかった。あの・・・・ローゼットさんに」
 
 「謝る必要はないよ?
  ・・・・・ローゼットはそうなって正直、よかったと思うし・・・優香が気に病むことじゃない。
  私たちは自己修復能力が備わっているの。だから大丈夫よ。
 
  こっちは気にしないで・・・今はミランダを倒すことを第一にしなさい。」

 
 「うん。・・・・・」
 
 「優香。これ終わったら・・・・私の手料理食べさせてあげる。」
 
 唐突の桂の申し出に優香は面食らう。
 
 「だから・・・・・お互い、元気に帰ろう?」
 
 「うん!」
 
 浮かなかった返事は桂に励まされ力強くなる。
 
 重苦しい気配。それを払拭してドアを開ける優香。
 礼拝堂にゆっくりと入っていく。
 
 並べられた椅子と机。
 十字架の祭壇の前に立つ長い金髪のレオタード姿。
 
 「・・・・武内優香さん。
  何故、あなたは私の邪魔ばかりするのです?」


その5へ戻る  その7へ進む


投稿小説トップへ   HPトップへ  メール   共通ご意見フォーム inserted by FC2 system